男性看護師が辞めてしまう原因

「ナース」、その言葉はまだまだ女性名詞として存在しているといってもいいだろう。病院を訪問した際、男性看護師を先々で見かけることが多くなったといっても、まだまだ女性看護師の数のほうが圧倒的に多い。

 

2014年の統計によると、女性看護師に対して、男性看護師の割合はわずかに約7%である。「男性が看護界に進出してきた」といっても、男性看護師の数は依然として少ないのが現状だ。

 

男性看護師の現状

 

男性の割合が高い一般の企業と比べると、大半を女性が占める看護師の職場では、一般の男性労働者たちとは異なる悩みを抱えやすいのが男性看護師である。女性が占める看護師の職場で、男性看護師が辞めてしまう原因として挙げられるのが以下の通りだ。

 

@ 看護師同士の人間関係のトラブルに巻き込まれる
A 医師との対立が起きやすい
B 男性という理由で管理職候補から外される
C 女性看護師よりも体力仕事や雑用を任されることが多い
D 労働に対して、給与が少ない
E 男性という理由で患者からケアを断られる
F 男性が勤務する科が限定されている

 

このように看護師社会は女性が圧倒的に多いため、男性看護師はさまざまな面でストレスを感じることが多いといえる。

 

まず@の看護師同士の人間関係のトラブルの件であるが、女性にありがちな優劣をつけるやり方に馴染めないことで問題が起こることが多い。これは男性ではなく、女性同士でも起こりえる。

 

またAの医師との対立であるが、これは医師が「看護職を男が就くなんて」といった偏見から、医師が男性看護師をあまり評価しないことで生じる問題である。

 

またBも女性看護師が中心の病院であると、キャリアは変わらないにも関わらず、男性看護師は管理職になりづらいといったことも起こっている。

 

CDに至っては、女性看護師は体力の必要な仕事を「男性看護師が行って当たり前」と考えているふしがある。女性看護師より男性看護師のほうが明らかにハードな労働を行っているにも関わらず、給与面での大差がないといったことも挙げられる。

 

Eは、男性看護師がどのように心を尽くして看護を行ったとしても、「男性だから」という理由で清潔・排泄ケアなどを嫌がる女性患者も多い。仕事とはいえ、どのような男性看護師でも一度は拒否されたことがあるだろう。そこは割り切るしかない。

 

またFも、男性という理由で体力が必要な科に回されることが多く、自分が希望していた科とは異なる科に配属ということも多々ある。

 

こんな男性看護師がいた

 

私が以前勤めていた病院での男性看護師は大変気の毒であった。やや気弱な20代の男性看護師の話だ。その病棟の師長もまた30代後半の男性であった。この男性師長は元バレー部で体育会系の性格であった。対して20代の男性看護師は「何者にも優しい」という反面、「弱そう」「反抗してこない」といった性格で、一部の看護師にとっては格好のストレス解消の的となっていた。

 

ある日、彼が指示された薬剤の量を事前に確認し忘れており、指示よりも多い量の薬剤を点滴してしまいそうになった。幸い、点滴をする前に自ら気づき未遂に終わることができた。しかし、この男性師長に報告すると、「待ってました」といわんばかりの1時間以上の執拗な説教が続いた。

 

その上さらに、昼のミーティングではスタッフ全員の前で「お前は看護師として役に立たないんだよ」とこの師長から怒鳴られた。若い男性看護師はひたすら泣き、謝っていた。社会人として自立しているにも関わらず、このようなことでひたすら謝る彼の姿はあまりにも痛々しかった。

 

一方で男性師長は、この若い男性看護師を必要以上に怒鳴ることで、いじめを行っている看護師の一員であることをアピールし自らの孤立を防ぐだけでなく、師長として権力を見せつけ優越感を保っていた。師長にとって、この男性看護師は自分の存在を周囲に認めさせるための格好のターゲットであった。

 

1年以上もこのような師長や同僚の女性看護師からのパワハラを受け、その若い男性看護師は看護職を退き、精神科に通院するようになったという。

 

このように男性看護師同士でも弱肉強食にならなければ、看護師社会で男性が生きていくのは難しいということだ。

 

男性看護師は転職に慎重になろう

 

男性看護師には、特に転職には慎重になってもらいたい。女性なら、まだ転職を繰り返したとしても、この日本社会では許される風潮がある。日本では女性がまだまだ仕事をする環境が整っていないため、結婚や出産、育児といったことで、キャリアを積んでいくことが難しい側面もあるからだ。

 

しかし、このようなキャリアを阻む機会が少ない男性が転職を繰り返すようでは、どうしても「なにか性格的に問題がある人物ではないか」と疑われてしまい、希望するようなキャリアを形成できないことが多い。男性看護師は特に、看護師として経験を積み、確実に「社会にとって必要」と言わしめるような人物になるようキャリアアップを図っていく必要がある。

 

そのためには看護師として、豊富な経験をもち、専門性を高めていく必要がある。「僕は慢性期病棟や高齢者施設、精神病院で働きたい」とする場合でも、とりあえずは、救命救急、ICUなどで経験を積んでおけば、「いざというときには頼りになる存在」として重宝される。

 

慢性期病棟でも、高齢者施設でも、精神病院でも、「いざ」というときは多々あるからだ。そのとき、オロオロして役に立たないようであれば、周囲から「男性なのに頼りにならない」と思われる。「男なのに」といわれると、世の男性は急に縮こまってしまう。男でも出来ないことはあるけれど、しかし、世間はやはり男性だから期待してしまうのだ。いざというときは男性が動いてくれるだろうと。そして、なによりいざというとき動けなかったら、自分自身が一番辛いのではないだろうか。

 

頼りにされる存在として勤務するほうが、仕事は充実する。ならば、頼られるようにキャリアアップを図っていくほうがいいのではないか。少しでも看護師を辞めないでいい環境を得るために、「今、なにを努力しておくべきか」を再考してみるとよいだろう。